東京証券取引所におけるプライム市場上場企業の日英同時開示の背景に迫る
東京証券取引所(東証)は、2024年2月26日、プライム市場の上場企業に対して、2025年4月から決算情報や適時開示情報の日本語と英語の同時開示を義務付けることを発表しました。東証がこうした決算情報や適時開示情報の日英同時開示の義務化に至った背景について考察してみました。
参考
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資料によると英文開示実施率(プライム市場)は、2023年12月現在で98.2%と高く、海外投資家による改善に関する評価は75%が改善されたと評価されました。一方、現状の英文開示に関する満足度を問うと72%が不満と言う回答でした。
なぜ不満なのでしょうか?
日本語との情報量の差、開示のタイムラグ、中小型株における英文開示の不足などが理由となっていました。そうしたことから、プライム市場上場会社への更なる海外投資家の投資を呼び込み、対話を通じた企業価値向上を促していく観点から、2025年4月より、その基盤となる情報の英文開示への義務化と舵がきられたのです。
なお、英文開示実施率は、対象書類(決算短信、適時開示資料(決算情報を除くその他の適時開 示資料)、株主総会招集通知、コーポレート・ガバナンス報告書、有価証券報告書、IR 説明会 資 料、及びその他の英文開示資料)のいずれかの資料について英文開示を行っていると回答した会社を対象としたものです。
1. 特に外国人投資家から英語での情報開示が求められるようになった背景
(1) グローバル化の進展
日本企業は、国内だけでなく、海外からの投資家からも多くの注目を集めています。
(2) 透明性の向上
英語での開示が行われない場合、外国人投資家が情報を得るまでに時間がかかり、日本語を理解できる国内投資家との間で情報格差が生じています。
(3) コーポレートガバナンス改革
2015年に導入されたコーポレートガバナンス・コードにより、日本企業の情報開示やガバナンスの透明性が強化されました。英語での情報提供は、特に外国人株主や国際市場での信頼性を高めるための重要な要素として位置づけられています。
2. 日英同時開示の内容
日英同時開示では、以下のような重要な企業情報が同時に公開されることを求められています。
(1) 決算短信(四半期および年度決算)
(2) 株主総会に関する資料(招集通知や議案)
(3) プレスリリース(業績予想や重要な経営判断に関する発表)
(4) コーポレートガバナンス報告書
これらの情報は、国内外の投資家が同時にアクセスできるように、東京証券取引所が提供する「適時開示情報閲覧サービス(TDnet)」にて日英同時開示の情報が確認できるようになっています。
3. 日英同時開示のメリット
(1) 外国人投資家が求める公平性の確保
日本語と英語の両方で同じタイミングに情報が開示されるため、国内外の投資家に対して公平な情報提供が行われます。これにより、外国人投資家にとっても、日本の企業に投資する際の判断材料が増えます。
(2) 外国人投資家へのアピール
外国人投資家にとって、日本企業の情報が英語で提供されることは重要です。日英同時開示を行うことで、企業は海外投資家とのコミュニケーションを強化し、グローバルな資金調達の機会を広げることができます。
(3) 外国人投資家との信頼性の向上
企業が英語でも即座に情報を提供することで、ガバナンスの強化と透明性が高まります。特に、外国の証券取引所に上場している企業や、外国企業との提携を行っている企業にとって、国際的な信頼性が重要です。
4. 課題
(1) コストとリソース
日英同時開示を実現するには、企業が十分なリソースとコストをかけて正確な翻訳やタイミングを管理する必要があります。特に、専門的な財務や法的な用語が含まれる場合、翻訳の質が非常に重要になってきます。
(2) 中小企業への負担
大企業に比べ、リソースの限られた中小企業にとっては、日英同時開示の実施が負担になる場合があります。そのため、中小企業においては英語開示が遅れる場合や、一部の情報に限定されることがあります。
5. 結論
東証が行なっている外国人投資家に対してのアンケート調査が日本企業に対しての情報の英文化及び日英同時開示への牽引となりました。国際的な投資家に向けての日英同時開示は、日本企業が彼らに対して公正かつ透明性の高い情報を提供するための重要な取り組みです。外国人投資家とのコミュニケーションや信頼構築を強化する手段として、今後もさらに広がっていくと予想されています。私たち翻訳会社もそうした動きに、積極的に取り組む姿勢が重要だと考えます。
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